_ 神経ネットワークのダイナミクスと生体情報処理
脳における情報表現や神経細胞の学習則などを理解するため,神経ネットワークの理論的研究を行っている.例えば,数理モデルを用いた神経特性と機能の関係性の考察[1,2],情報理論の観点から最適な学習則の導出[3],非線形システム論に基づく神経モデルの解析[4],さらには,神経の実データ解析[5]や神経モデルの性質を利用したアナログ計算デバイスの開発などに取り組んでいる.
- K. Morita, K. Tsumoto, and K. Aihara, Biophys. J., Vol.90, pp.1925-1938 (2006).
- Y. Katori, N. Masuda, and K. Aihara, Neural Networks, Vol.19, pp.1463-1466 (2006).
- T. Toyoizumi, K. Aihara, and S. Amari, Phys. Rev. Lett., Vol.97, 098102 (2006).
- K. Tsumoto, H. Kitajima, T. Yoshinaga, K. Aihara, and H. Kawakami, Neurocomput., Vol.69, pp.293-316 (2006).
- K. Fujiwara, H. Fujiwara, M. Tsukada, and K. Aihara, Biosystems, in press (2007).
_ 非線形システム解析とリアルワールドへの応用
カオスを典型例とする非線形動力学理論によって,複雑でありながらその裏に規則性をもつ世の中の様々な現象を理解することを目指している.システムの「非線形性」に注目して世の中の複雑な現象を数理モデルで記述し,その解の定性的振る舞いの分岐解析や時系列解析などのツールを用いることで,いかに単純な非線形系が複雑な現象を生成しうるか,またいかに複雑系が組織化されるか,などの基礎数理的な問題に取り組んでいる[1-5].さらに,生体膜応答や風のカオス性など実世界における応用研究も行っている.
- H. Suetani, Y. Iba, and K. Aihara, J. Phys. A, Vol.39, pp.10723―10742 (2006).
- H. Ando and K. Aihara, Phys. Rev. E, Vol.74, 066205 (2006).
- G. Tanaka, B. Ibarz, M.A.F. Sanjuan, and K. Aihara, Chaos, Vol.16, 013113 (2006).
- Y. Hirata, H. Suzuki, and K. Aihara, Phys. Rev. E, Vol.74, 026202 (2006).
- N. Masuda, G. Jakimoski, K. Aihara, and L. Kocarev, IEEE Trans. Circ. Syst. I, Vol.53, pp.1341-1352 (2006).
_ 細胞システムの数理モデリング
生物の構成単位である細胞の集団としての活動を理解するため,細胞内生化学反応の非線形ダイナミクスを研究している.遺伝子・タンパク質ネットワークの数理モデルを構築して,概日リズムなどの生物現象の仕組みを理解すると同時に,確率的揺らぎが信号伝達に与える影響を考察し,人工遺伝子ネットワークの提案や設計を目指している[1-7].
- D. Battogtokh, K. Aihara, and J. J. Tyson, Phys. Rev. Lett., Vol.96, 148102 (2006).
- Y. Morishita, T. J. Kobayashi, and K. Aihara, Biophys. J., Vol.91, pp.2072-2081 (2006).
- G. Kurosawa, K. Aihara, and Y. Iwasa, Biophys. J., Vol.91, pp.2015-2023 (2006).
- C. Li, L. Chen, and K. Aihara, Physical Biology, Vol.3, pp.37-44 (2006).
- C. Li, L. Chen, and K. Aihara, IEEE Trans. CAS-I, Vol.53, pp.2451-2458 (2006).
- C. Li, L. Chen, and K. Aihara, PLoS Comput. Biol., Vol.2, e103 (2006).
- R. Wang, L. Chen, and K. Aihara, J. Theor. Biol., Vol.242, pp.454-463 (2006).
_ 疾患の数理モデリング
複雑系の解析手法を応用することにより,社会的な関心の高い疾患の数理モデル研究に取り組んでいる.特に,効果的な予防法や治療法が十分に確立されていない現代病や感染症に対し,数理モデリングを通じて本質的な機構を理解し,実効的な対策を提案することを目指している.前立腺癌の数理モデル研究では癌の再燃に対する間欠ホルモン治療の有効性を調べた[1].また,感染症の伝播ダイナミクスの解析[2,3]や大規模解析システムの開発も行っている.
- A. Miyamura, G. Tanaka, T. Takeuchi, and K. Aihara, METR, University of Tokyo, 2006-32 (2006).
- K. Ohtsuka, N. Konno, N. Masuda, and K. Aihara, Int. J. Bifurcation and Chaos, Vol.16, pp.3687-3693 (2006).
- N. Sugimine, N. Masuda, N. Konno, and K. Aihara, Mathematical Biosciences, in press (2007).